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東京高等裁判所 昭和62年(う)778号 判決 1987年11月09日

本店所在地

栃木県栃木市大宮町二四二七番地一六

五月女総合プロダクト株式会社

右代表者代表取締役

五月女博勇

本店所在地

同県同市川原田町一三四一番地二

五月女産業株式会社

右代表者代表取締役

五月女博勇

本籍

栃木県栃木市平柳町一丁目一八四番地

住居

同市川原田町一三四一番地二

会社役員

五月女博勇

昭和一八年一二月二三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、昭和六二年四月二四日宇都宮地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人らから各控訴の申立てがあったので、当裁判所は検察官村山弘義出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人一木明名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官村山弘義の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから、これらを引用する。

所論は、原判決には所得額・所得の帰属・犯意の及ぶ範囲につき判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのであるが、記録及び原裁判所において取り調べた証拠物によれば、所論に関し原判決が争点に対する補足説明の項において認定判示したところは、原判示一の3の福利厚生費につき判示した項を除き概ね正当として是認することができ、所論の指摘するような判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるとは認められない。以下、所論にかんがみ敷衍して説明する。

第一被告会社五月女総合プロダクト株式会社(以下被告会社五月女総合という)関係について

一  所論1は、高川賢一が栃木シアター店(以下シアター店という)から昭和五九年二月以降除外した売上金は、被告人五月女博勇(以下被告人という)作成の赤色小手帳に記載された金額の半額程度であるのに、その金額を売上除外金と認定した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、検討すると、関係証拠によれば、(1)被告人は、シアター店について昭和五九年二月ころから同店の店長高川賢一に指示して売上げの一部を除外させていたが、同店の売上げはコンピューターが打ち出す売上げデーター表に印字されるところ、高川が売上金を除外するときは、真実の売上げデーター表をアウトプットしたのち、売上げの一部を除外した金額を打ち直した売上げデーター表を新たに作成し、この打ち直した売上げデーター表と除外後の売上金を被告会社五月女総合の経理係に引き継ぎ、経理係はこのデーター表に基づき売上等明細ノート(昭和六一年押第一九号の三)を作成し、公表帳簿としていたこと、(2)他方、売上除外金は高川から被告人に直接手渡され、真実の売上げデーター表はその際被告人に手渡されないものについては高川において廃棄するよう指示されていたこと、そのため真実の売上げデーター表についてはほとんど廃棄処分されたが、昭和五九年六月分及び七月分だけは営業中割数伝票入籍(同号の一三)内から発見押収されたこと、(3)被告人の高川に対する売上げ除外の指示は、当初そのつど日を決め具体的金額を指示して行われたが、昭和五九年三月ころ以降は、一週間位の単位で一応の金額をまとめて指示し、しかも特定の日を指定するのではなく、売上高がある程度大きかった日で、かつ割数(パチンコ遊技客への出玉数に四を掛けたものを売上金額で際したもの)が小さい日に売上げ除外をするよう指示していたが、右赤色小手帳への売上除外金の記載は一週間単位のものとしては記載されておらず、個別の日毎に金額が記載されていること、(4)前記昭和五九年六月分と七月分の真実の売上げデーター表に記載されている売上金額から打ち直された売上げデーター表に基づき作成された売上等明細ノート記載の対応月日の売上金額を差引いて算出した売上除外額と、赤色小手帳の各対応月日の数額を対比してみるとき、右六月と七月の二か月間間を通じて六月九日、一二日、二一日の三日分を除きその余は全部一致することがそれぞれ認められ、これらを総合すると、赤色小手帳の記載数字は、事前の売上除外予定額を記載したものではなく、被告人において高川から売上除外金を受取るつど赤色小手帳の受領した日欄に受領金額が分るように記入したものと推認される。そして、右の赤色小手帳の記載金額と実際の売上除外額とが異なる三日分については、いずれも右赤色小手帳に記載された金額の方が実際の売上除外額より五万円ずつ少なく、赤色小手帳記載の金額は予定売上除外額であり実際の除外高はその半分程度であったとする所論とは全く反することが明らかである。弁護人は右三日分の赤色小手帳の記載金額が実際の売上額とは異なることが何よりも赤色小手帳には実際の除外金額を記載したものではないことの証左であるとするけれども、被告人及び高川賢一の原審公判廷における各供述によると、高川は売上除外金を被告人に全額手渡していたが、シアター店の従業員を慰労する必要があるときには、売上除外金を被告人に手渡す際に従業員を慰労するための金を支出して貰いたい旨要望し、被告人もこれを容れてその場で直ちに受領した売上除外金から五万円ないし一〇万円位を高川に渡し、高川はこの金員をもってシアター店従業員を慰労していたと供述していることに照らすと、被告人は受領した売上除外金から慰労金としてその場で直ちに高川に手渡した金員を差し引き最終的に被告人の手許に残った金額を右赤色小手帳に記載したものと推認され、いずれにしろ赤色小手帳の金額が実際の売上除外額より下回ることはあっても上回ることはないとみられる。そうすると、本件における昭和五九年二月から同年七月までの間の売上除外高の算定につき、検察官が同年六月分と七月分については前記のように真実の売上げデーター表が残されているので、これと前記売上等明細ノートから算出される売上除外額により、その余については真実の売上げデーター表が残っていないので、少なくとも赤色小手帳に記載された金額の売上除外が行われていたものとして所得計算した処置を正当とした原判決の認定に誤りは認められない。

なお、弁護人らは、シアター店の高川店長が簿外で同店従業員の慰労のため支出した金員は経費として控除すべきであると主張し、原判決はこれを採用しなかったが、右にみたような従業員慰労費支出の経過及び赤色小手帳の記載金額が被告人が高川から受領した売上除外金から慰労費支出分を控除した残額とみられること、並びに前記売上除外の算出方法に照らすと、従業員慰労費として支出された分は、前記三日分を除いてはすでに所得から控除されていることになり、右三日分の慰労費合計一五万円のみが簿外福利厚生費として控除されるべき金額となるので、これを昭和五七年七月期の所得から控除すると、結局原判示第一の三の実際所得額は一二〇五万二三五円、ほ脱税額は四一六万四三〇〇円と認定すべきところ、原判決には所得金額を一二二〇万二三五円、ほ脱税額を四二二万九三〇〇円と過大に認定した事実誤認があることになるが、右過大認定額の実額・割合はその全体との対比においてみれば極めて小額・低率であって判決に影響を及ぼすものではない。

二  所論2は、寺内清がシアター店の譲受人従って所有者として同店の売上金から持ち出した金員及び同店の売上金としていったん預金されたものから引き出した三九二万円については、被告人は被告会社五月女総合の収入ではなく他人の収入であると信じていたのであるから、右各金員部分については犯意がないのに、脱税額の算定にあたりこの部分についても犯意を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、検討するに、関係証拠によれば、(1)被告人は、昭和五八年一一月末ころ、寺内清に対し、シアター店を営業譲渡することになり、同人から手付金を受領し、同店が新装開店した同年一二月二三日ころから翌昭和五九年一月三日まで同店の管理を寺内に委ねたが、残金の支払を得られないのにそのまま同人に営業を委ね続けることに疑問を抱き、同月四日からは残金の支払が完了するまでは被告会社五月女総合がシアター店の営業を続けることとし、高川賢一を同店店長としてその管理にあたらせ、その間の経理関係を明確にするため、栃木信用金庫新栃木支店に、「五月女総合プロダクト(株)シアター代表取締役五月女博勇」名義の普通預金口座を新設し、毎日シアター店の売上げ金額を同口座に預金したうえで、予定される支払金や経費分を引出して使用する方法で収支を明確にしていたこと、(2)同年七月期が到来し、申告期限が迫っても寺内から残金の支払が得られないため、被告人は同年一月四日以降のシアター店の営業より生じた損益はすべて被告会社五月女総合に帰属するものとして決算することとし、田中良平税務事務所に依頼して、その旨の決算書を作成させ、これに基づき確定申告書を作成のうえ同年一〇月一日ころ所轄税務署にこれを提出したこと、(3)その間前記の普通預金口座から(イ)同年二月一五日に八〇万円、(ロ)同月二五日に二〇〇万円、(ハ)同年四月一七日に一一二万円の合計三九二万円が引出され寺内に手渡されているところ、右のうち(ハ)の一一二万円は同月二七日同普通預金口座に返金処理され、(イ)の八〇万円は換金(仕入)代として損金に算入し、(ロ)の二〇〇万円は寺内よりの仮受金の返済ということで精算処理をしており、同年七月期の被告会社五月女総合の決算手続も右処理を前提としてなされていることが認められる。そして、本件においては、寺内がシアター店の売上げを実質的に管理していた同店の新装開店した昭和五八年一二月二三日ころから同五九年一月三日までの間の売上げについては被告会社五月女総合の売上高に計上されていないから、この間に寺内が持ち出した売上金が同被告会社の所有に帰属することを前提として被告人にはこの部分について犯意がないとする主張はその前提を欠き失当であり、同月四日以降のシアター店の収支・損益はすべて被告会社五月女総合に帰属するものとして処理させ、これを前提として確定申告書を作成提出しており、かつ右三九二万円は被告会社五月女総合の収入である金員からの持ち出しであるから、所論の右三九二万円が被告会社五月女総合の収入ではないとか、この部分について被告人に犯意がないとの主張は採用できない。論旨は理由がない。

第二被告会社五月女産業株式会社(以下被告会社五月女産業という)関係について

一  所論1は、株式会社東京商事(以下東京商事という)会沢工場からの商品売上手数料は同社に対する融資の見返りであるところ、当時の被告会社五月女産業の経営状態はそのような融資をする余裕はなく、右融資は被告人個人の融資であるから、右手数料収入も同被告人個人の収入に帰属すべく被告会社五月女産業に帰属するものではないのに、これを看過し右手数料収入を被告会社五月女産業に帰属するものとした原判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、検討すると、関係証拠によれば、(1)被告人は、被告会社五月女産業の代表者として砕石等骨材販売業を営み東京商事との間でも取引をしていたが、そのかたわら個人的に金融業を営み、東京商事に対しても金融貸付けをしていたこと、(2)昭和五八年四月ころ東京商事に貸付けられた三〇〇〇万円についてては、貸付けにあたり引換えに東京商事から同社の会沢工場が生産する砕石の販売権が譲渡されることと、代車の優先的配車の権利が与えられることが条件となっていたが、砕石の販売及び代車の提供は被告会社五月女産業の業務であって、被告人が個人で営む金融業とは無関係であること、(3)東京商事は融資を受けた三〇〇〇万円のうち二〇〇〇万円について被告会社五月女産業の別名であるビックエンタープライズからの長期借入金として同社の決算報告書に公表計上していること、(4)被告人側は東京商事から右会沢工場が生産する砕石の販売権を得たものの、これを一手に売りさばけるような販売能力がなかったところから、東京商事の社長斉藤政宏との話し合いで、会沢工場が出荷する砕石の量に応じて一定割合の手数料の支払を受けることにし、そのため被告会社五月女産業の従業員を同工場に出荷させて砕石の出荷量を管理させ、手数料はすべてビックエンタープライズ名義の普通預金口座に入金させていたこと、(4)右手数料収入は、ビックエンタープライズの売上帳に記載され、昭和五九年三月からは被告会社五月女産業の帳簿にもその一部が記載され、同年一一月期の法人税申告にあたって被告会社五月女産業の所得としてつまみ申告されていること、他方被告人は昭和五八年度、五九年度とも右手数料を自己の所得としては申告していないことがそれぞれ認められる。そして、捜査段階において、被告人及び右斉藤政宏は、東京商事に対する複数回にわたる貸付けに関連して、それらが被告会社五月女産業の行なった貸付けか被告人個人が行なった貸付け明確に区別して述べるよう大蔵事務官や検察官から求められ、両名とも右三〇〇〇万円の貸付けは被告人個人の貸付金とは異なり被告会社五月女産業の貸付金であり、これについては借用証のかわりに東京商事振出の同額の約束手形が交付され、書替えられて来たと述べており、原審公判段階に至り弁護人の所論にそう供述をするようになったが前記認定したところに照らし到底措信することができない。弁護人は右貸付資金の出所を問題とするのであるが、被告人の大蔵事務官に対する昭和六〇年四月一九日付質問てん末書によれば、右貸付資金は被告会社五月女産業及び同五月女総合の各裏金と被告人個人の金からなるものであるというのであるが、そうとすれば被告人個人の持込資金分は被告会社五月女産業に帰属し被告人からの借入金として計上されるというにすぎず、本件手数料収入が被告会社五月女産業に帰属することにつきねんら消長を及ぼすものではない。以上を総合すれば右手数料収入をもって被告会社五月女産業に帰属するものと認めた原判決に事実誤認は認められない。論旨は理由がない。

二  所論2は、藤坂砕石工業株式会社(以下藤坂砕石という)及び渡辺産業株式会社(以下渡辺産業という)からの仲介手数料は、被告人個人がプラント売買の仲介をしたのであるから、当然に同被告人個人の収入であるのに、被告会社五月女産業に帰属するとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、検討するに、右仲介手数料は、渡辺産業と藤坂砕石との間の採石プラントの売買を仲介したことに対して支払われたものであるところ、右仲介行為を被告人五月女博勇が個人として行なったのか、被告会社五月女産業の代表者として行なったのかをみると、関係証拠によれば、(1)右売買の目的物である採石プラントは当初渡辺産業から被告会社五月女産業へ売り込みがあったが、同社では買取りをことわるとともに同業の藤坂砕石に売り込みを仲介することになったものであること、(2)右仲介手数料の領収にあたっては被告会社五月女産業名義の領収書を発行していること、(3)被告人は、右仲介手数料を被告会社五月女産業の雑収入として経理処理させており、他方藤坂砕石においても右手数料を被告会社を五月女産業に支払ったものとして経理処理していること、(4)被告人は本件手数料収入を個人の所得としては申告していないことがそれぞれ認められ、右各事実を総合すると右仲介行為は被告会社五月女産業が同業者としての立場からなしたもので、これが成功して売買を成立させたことに対し支払われた本件仲介手数料収入は被告会社五月女産業に帰属するものと認めるのが相当であり、原判決に事実誤認は認められない。論旨は理由がない。

三  所論3は、ビッグエンタープライズ名義でなされた取引については、これを実質どおり被告会社五月女産業の取引として処理するよう税理士に指示していたから、同名義の取引について申告がなされていないことにつき被告人には犯意がないのに、これを認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。

そこで、検討すると、関係証拠によれば、(1)被告会社五月女産業は、自己名義で砕石等の仕入・販売等の取引をするかたわら、昭和五五年四月ころからはビッグエンタープライズ名義を使用して同様の取引をすることにより売上げ除外を行ない、またビッグエンタープライズからの仕入を仮装計上するなどしていたものであり、ビッグエンタープライズ名義を使用した取引については、被告会社五月女産業名義による取引とは別個の口座を用いて金の出し入れを行ない、別個の売上帳(前同号の六及び七)に記載して経理をしていたこと、(2)被告会社五月女産業の帳簿・伝票・決算書等にもビッグエンタープライズの名前が出てくるが、そこでは一個の独立した取引先として仕入や金銭の貸借関係があるかのように仮装されていること、(3)被告人は、被告会社五月女産業の決算・申告業務を昭和五八年一一月期から田中良平会計事務所に依頼するようになったが、同事務所の担当者が右業務を行なうにあたっては五月女産業名義で作成され、かつ同社かな提供された帳簿・伝票類などの資料に基づいて行なっていたもので、ビッグエンタープライズ名義で作成された売上帳・伝票などの資料まで提供されてはいなかったこと、(4)被告人は、昭和五九年一一月中旬ごろ、同年一一月期の申告業務を担当した右事務所の事務員岩崎和重から、それまでの被告会社五月女産業から提供された資料に基づく収支の状況から繰越しができない欠損金が出るとの指摘を受け、それまで公表していなかった収入を所得が零になるまで公表計上することを考え、それまで被告会社五月女産業の経理上公表計上していなかった東京商事から受領した手数料収入の一部を同被告会社の収入として計上するよう指示したが、ビッグエンタープライズの経営実態が被告会社五月女産業と一体となるものであることの説明や、ビッグエンタープライズ名義でなされた取引を同被告会社の取引として計上することまでの指示や、そのための資料の提供等は一切しなかったこと、(5)被告人は、被告会社五月女産業の法人税申告に先立って右事務所の担当者である岩崎和重らから決算書や申告書の内容の説明を受け、これを了解のうえ申告手続をさせていたことがそれぞれ認められ、これらを総合すると被告人にビッグエンタープライズ名義の取引による所得をほ脱する犯意があったことが明らかであり、原判決に事実誤認は認められない。

論旨は理由がない。

よって、刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 朝岡智幸 裁判官 小田健司)

○控訴趣意書

被告人 五月女総合プロダクト

外二名

右の者に対する法人税法違反被告事件についての控訴の趣意は左記のとおりである。

昭和六二年七月九日

右弁護人 一木明

東京高等裁判所第一刑事部 御中

第一、原判決には、明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認が存するので、その破棄を求める。

一、判示第一(五月女総合プロダクト株式会社関係)について

1、高川賢一が、プロダクト栃木シアター店から、昭和五九年二月ごろ以降に、除外した売上金は、同人の原審における証言からも明らかなように、赤色小手帳に記載された金額の半額程度であるのに、原判決は捜査記録をうのみにして、その金額を認定した。

2.寺内清が、プロダクト栃木シアター店の譲受人、従って所有者として、同店の売上金から持ち出した金員について、被告人は、他人の収入であると信じ込んでいたのであるから、この点については犯意がない。

また、同店の売上金として一担預金されたものから、寺内が引き出した金三九二万円についても同様である。

二、判示第二(五月女産業株式会社関係)について

1、東京商事会沢工場からの商品の売上手数料は、同社に対する融資の見返りである、ことは原判決も認めるとおりであるが、当時の五月女産業の経営状態等を考えると、それは被告人五月女博勇個人の融資であることは疑いなく、原判決はこれを見過ごしている。

2、藤坂砕石工業及び渡辺産業からの仲介手数料は、五月女博勇個人が、プラント売買の仲介をしたのであるから、当然に個人の収入である。

3.ビッグエンタープライズ名義でなされた取引は、これを実質どおり五月女産業の取引として処理するよう、税理士に指示したのであるから、被告人に犯意はなかった。

第二、以上のとおりであるから、原判決は破棄を免れない。

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